猫とワタシ

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背中合わせのNight&Day

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LIFE

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幼稚園の入園式の日のことを憶えている。
全体的にはぼんやりしているけれど、所々くっきりと。

朝、背中までのばしていた髪を母が耳の上でふたつに結んでくれたこと。
それがきつくひっつめられて、地肌がちょっと痛かったこと。
ちっとも可愛くない肌色のスモックを着せられたこと(それが制服だった)。
和服姿の母と玄関の前で写真を撮ったこと。
いままでとは違うどこかに行かされて何かが始まるんだ、という感じが
両親のいつにないはりきり方やよそゆき的なふるまいから伝わってきて、
戸惑い、気持ちが少し塞いだこと。

ここから記憶の場面は幼稚園のホールへと飛ぶ。
そこにはかつて見たことのないほど大勢の、同じ年頃のひとがいた(当たり前じゃが)。
そしてその幼稚園の「園歌」を斉唱することになったのだが、
わたしはその曲をそのとき初めて聴いた。
しかもその歌は自分が親しんできた童謡やアニメソングに比べて
メロディも歌詞もずっと複雑だった。
まったく歌えなかった。
しかしまわりにいる子たちはみんな大声で思いっきり歌っている。
歌っている子たちがものすごく賢そうに見えた。
口パクですらついていけない自分にあせりを感じた。
思えばあれこそが、劣等感だとか疎外感だとか、
そういう負の感情を生まれて初めて味わった瞬間だったかもしれない。

そもそもだいたいにおいて、そこが何をする場所で、
自分が何のためにそこに連れてこられたのかもまったく理解していなかった。

誰かに話しかけて仲良くしようとか、そういうことも全然思いつかなかった。
みんなが幼稚園の庭で遊んでいるときに、
ひとりで水飲み場のあたりでぼけっとしていた。
そしたら「ねえねえ」と後ろから声をかけられた。
「えっ?」と振り返ると、ふたりの女の子がわたしを見てニコニコしながら立っていた。
そして女の子たちは声をそろえて言った。
「ともだちになろうよ」

ともだち、という言葉はそのときに初めて聞いたのだと思う。
その意味など当然わかっていなかった。
知らない言葉を口にするその子たちは少し大人びて見えたけれど、
なにかものすごくうれしいことを言ってくれたのだということは、
もちろん瞬時にわかった。

きくちゃんとみほこちゃんという名前の女の子だった。
どうしてあのときわたしに声をかけてくれたのかはわからないし、
それからいっぱいケンカもしたりしたけれど、
でもそれ以上にいっぱい遊んだなぁ。
きくちゃんとふたりでハーモニカを吹いたことを思い出す。
きくちゃんも上手だったけど、きくちゃんはいつもわたしのハーモニカを褒めてくれた。

小学生になってからきくちゃんもみほこちゃんも引っ越したり転校したりして
それっきり会えなくなってしまった。
でもずーっと忘れない。忘れられない。
ひとりぼっちの水飲み場で、
「ともだちになろうよ」って言ってもらったときのあの気持ち。

さむーい夜にまた思い出した。

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トップの猫ちゃん、日当たりのよい出窓でお休み中のところを外から盗撮。
肉球にピントを合わせたいとしばしカメラと格闘していたらいつのまにか目を覚ましてました…
ごめんにゃ~


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